今回、ご紹介する患者様はI様。症例レポート作成に快くご同意いただきました。

初診時

他の医院で治療された前歯3本の見た目が良くなく、改善を希望に当院を受診されました。
他院での施術に満足されずご来院されるケースは最近特に増えてきています。
問題点はいくつかありやや複雑なケースでしたが、ひとつずつ紐解き患者様とご相談を進めました。

問題点

3本の歯（左右1番目と左2番目の3本）の大きさ、形が不揃いで、 他の歯や笑顔の際の唇とのバランスがあまり良くありません。 顔貌との馴染みもあまり良くありません。

• 約1年前に作製されたばかりとのことですが、歯の色に透明感・自然さがなく、のっぺりとした印象を受けます。
• 歯の軸がほんの少し傾いて左右非対称が目立ちます。歯の先端のラインが左にいくにつれ傾いています。歯と歯肉（歯ぐき）の境目のラインが左右の位置がバラバラになっています。
• 出っ歯気味に作製されています。

ご相談

まず、患者様のご希望は、前歯のアンバランスを解消して欲しいとのことでした。
詳しく診察すると上記した微妙な違いの積み重ねによりアンバランスが生じています。
今回治療するにあたり、ご相談の結果、3本のやり直しのみではなく、よりキレイに仕上げるため前歯4本を治療することをご希望されました。
また、新しい歯は、全てオールセラミッククラウンで治療することをご希望されました。

オールセラミッククラウン All Ceramic Crown

天然の歯本来の自然な透明感や艶を再現します。
オールセラミックでしか表現できないこの自然感は特に
前歯の治療にはおススメです。

治療過程

1日目

まずは準備した仮歯の装着です。現在のかぶせの歯を外し、土台の状態を調整し仮歯を取り付けます。次に歯肉（はぐき）の形の調整です。歯肉のライン（歯とはぐきの境のライン）が左右対称に近づくように特殊な方法で調整します。用意した仮歯を土台の歯に合うよう調整し、取り付けていきます。

まずはこの状態で、一度普通に生活して頂きます。おおよそ2週間の間隔を開け、その間に患者様には見た目の確認、笑顔の際の唇との調和、発音や咀嚼（食事）に問題がないかなど確認して頂きます。（この患者様はモデルというご職業柄、写真に写る機会が多い為、その際の映り具合も確認して頂くようお願いしておきました）

2日目

仮歯の確認です。仮歯ですので、まだ自然な色ではありませんが、患者様には元の歯よりも今の仮歯の方が全然良いとまずはご満足いただきました。機能的にも問題なく過ごせたとのことです。

3日目

最終の確認です。患者様も全く問題がないと気に入って下さっていますので、仮歯の見た目や形態・機能面に関する確認は終了です。この仮歯の形を参考に、最終の歯も作製します。

あとは土台の状態を最終的に型どりし、最終の歯を作製する行程に入ります。

新しい歯の作製準備として、周りの歯の色と調和させる為に色見本と一緒に歯の写真の撮影も行います。

4日目

最終の歯を完成させる前に、一度確認をします。確認作業の目的はいくつかありますが、特に歯の色・形や雰囲気がその患者様に合うかどうか、患者様が気に入るかを確認しています。問題なければ再度お預かりし、最終行程にて完成させます。

最終日

完成の歯（オールセラミッククラウン）を装着したところです。患者様のご協力のおかげで、歯肉との馴染みもよく顔貌にも調和した色・形に仕上げることができました。

歯はあまり左右対称を意識しすぎると逆に不自然になることもあり、必ずしも左右対称が理想的ではありませんが、自然な範囲で元の歯のアンバランスを改善しました。

まとめ

今回のケースでは、治療方法としてはそれほど難しいことは必要ありません。
このような症例では、なぜ気に入らないか？をよく患者様と相談し、元々の歯がどうしてそのような歯になってしまったか？どのような歯にすればそれらが改善できるのかを良く検討しより良いゴールを設定し治療にあたることだと考えています。
そのためには、我々歯科医師側からのみのアプローチだけではなく、患者様のご理解とご協力が不可欠となります。治療の様々な段階でよくご相談させて頂き、一緒により美しい歯を完成させるという取り組みが患者様にご満足頂くための重要な因子となってきます。

治療のみならず、今回のレポート作成にご同意いただきました患者様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。